ドイツ古典フルレンジシステムのセッティング

 

音響的借景


後面開放型のシステムは、

スピーカーユニットからの直接音に、

背後の壁面からの反射音を加えることによって、

音場を拡大描写し、低音を増強するシステムです。

そこには、

借景を得て完成する庭園のごとき奥深さがあります。

この音響的借景とも言える手法を実践する上で重要なのは、

・背後の壁までの距離

・背後の壁の材質

の二つのポイントになります。

ミニマム30センチ


キャビネットの背後に空間を設けることは、

それだけ生活空間を削ることになります。

また一般には、背後の壁の材質を変更することは困難です。


そうした現実的制約を念頭に、一つの目安として弊舎では、

キャビネット後端と壁との間隔を30cmとること

・背後の壁に製品梱包内のダンボール板を立て掛けること

を、

音響的借景が成立するミニマムの条件と考えています。


壁との間隔を30cmとしたとき、

後述の低音増強作用が働く音域は、

140Hzを中心に低い方は80Hzくらいまでとなります。

ユニットの低域レンジを使い切るところまでは行きませんが、

キレの良い軽快な低音は、

ほとんどの楽曲をお楽しみ頂くに十分かと思います。


これより壁に近付くことの弊害は、

低音増強作用が弱まることよりも、

キャビネット自身が壁からの反射音を覆い隠してしまい、

音響的借景が破綻してしまうことにあります。


反射音がリスニングポイントに戻って来ないばかりか、

壁とキャビネットの間を往復して音がこもる原因にもなります。

(同様の理由で弊は、平面バッフル方式をお薦めしません)


弊舎フルレンジシステム製品の梱包内にて、

キャビネットの前面を覆っている保護ダンボール板は、

弊舎におけるニュートラルな音調の反射材の基準でして、

これを背後に立ててシステムの調整、試聴を行っています。


従いまして、

このダンボール板をそのまま背後に立ててお使い頂くのが

最も手軽な設置環境のチューニング方法となるわけです。


以上のミニマム設定にて、

ドイツ古典フルレンジの優れた再生能力に、

音響的借景を組み合わせることの効果を

ご確認頂けることと思います。

後面開放型のシステムは鳴らすのが難しい・・

と言われますが本当でしょうか?


一般的には難しいと思います。

・良い箱

・良いユニット

・良い設置

3拍子が揃うことが必要だからです。

しかし、ドイツ古典フルレンジシステムであれば、

最初の二つの要素は弊舎にて用意済みですから、

最後の「良い設置」に専念頂くことで、

よく鳴るシステムが比較的容易に完成いたします。

©2019 粋音舎

もう20センチ・・


『後面開放型は低音が出ない』との誤解が多いのですが、

出せます。


意外に見過ごされているのが、背面反射音による増強作用です。

後面開放型のシステムでは、

ユニット前面からの低音に、

背後の壁面から跳ね返ってくる低音を加算して、

強め合うことができます。


この増強作用を積極的に使う一つの目安は、

キャビネットの後ろから壁までの距離を50㎝ほど取ることです。

本製品は、30cmの奥行きがありますので、

ユニット背面から壁までは約80cmになります。

このとき増強される周波数の中心は約100Hzですが、

徐々に弱まりながらも、

効果がほぼ消失する50Hzくらいまでは増強作用が及びます。


『後面開放型は低音が出ない』との誤解を生むもう一つの要因は、

高音優勢の背面反射音です。

高音の反射が強ければ相対的に低音が控えめに聴こえますので、

腰高なバランスの再生音になります。

逆に高音の反射が弱ければ、

ピラミッドバランスのどっしりとした再生音になります。

この辺りの事情は、2wayシステムにおいて

ツィーターのレベルを増減調整するときと全く同じです。


困ったときには、

製品梱包内のダンボール板をお使い頂くのが無難なことは

前述の通りです。

勿論、より積極的には、

ダンボール以外の反射体を置いたり、

吸収性/反射性の異種材料を壁面に貼付けたりと、

お好みの反射特性に壁面をアレンジ頂くことも、

システムチューニングの楽しみの一つかと思います。


その際ご注意頂きたいのは、

材質は反射音の音調を占う一つの目安にはなりますが、

同じ材質なら同じ音調とは限らないことです。


例えば、弊舎フルレンジシステムの

外梱包用ダンボールを背後に立ててご試聴頂ければ、

保護用のダンボール板よりも明らかに高音優勢の反射音を与え、

腰高な再生音になるかと思います。

外梱包用ダンボールは、厚く、硬く、表面が滑らかです。

逆算して考えれば、

薄く、柔らかく、表面の組織が粗いことが、

ニュートラルなバランスを得易い反射面と言えそうです。


反射面までの距離もまた重要です。

距離が短い程、強い音圧を受けますので、

反射体の材質、寸法に由来する固有音が顕在化し易いのです。


もう20センチ・・の努力は、ここでも報われるのでして、

50cmを確保頂いたシステムは、

30cmのシステムよりも背後の環境の違いに対し寛容です。

そして、

より広い壁面に展開する音響的借景、

より効果的な低音増強と相まって、

ミニマム条件のときとは別世界が出現いたします。

さらに・・


50cm以上の距離をとれば、

更に雄大な借景と、

更に深さを増した低音を得ることが可能です。


但し、

ドイツフルレンジの最低共振周波数は80100Hzにあって

そこから低い周波数に向けての音圧の減衰は比較的早いため、

あまり周波数レンジを欲張っても空振りに終わります。

ユニットにも依りますが、

概ね1m程度までが適正範囲かと思います。


とはいえ、

キャビネットと壁の間に50cm1mもの間隔を設けることは、

普通のご家庭では、現実的でないかも知れません。


例えばキャビネットを台車に載せて普段は壁際に納めておき、

リスニング時にだけ前方に移動するというのも、

後面開放型のシステムを楽しむ一つの方法かと思います。

良い箱とは


以上「良い設置」について述べて参りました。


良いユニット」は、申し上げる迄もないかと思います。


では、「良い箱」とは、どういう箱でしょうか?


良い箱に納められた後面開放型システムは、

前後逆さまの配置でも快適な再生音を提供いたします。

また、そうでなくては、

システムからの後方音自体に強い癖がありますと、

これを設置条件の工夫で補うことは、

大変困難な課題となってしまいます。


そのため、 

後方音から不快な成分を摘み取ることが、

後面開放型キャビネットの重要な役割になります。

その不快な成分とは、

・後方音が共鳴して発生するこもり音

・反射音が還流して発生するこもり音

キャビネット板材の固有振動音

・ユニット部材(バスケット)の固有振動音

等々になります。


これらの因子を抑制するため、

ドイツ古典フルレンジシステムのキャビネットには、

・表面加工による制振処理を施した板材

・背板の不在をカバーする補強桟の配置

等々の工夫が盛り込まれています。


キャビネットの寸法形状は、特に重要です。

浅からず深からずの奥行き寸法は、

後ろ向きのショートホーンとして機能しつつ、

箱臭さを抑えるための設定です。


極力反射音を覆い隠すことのないよう、

小さく設定した前後方投影面積は、

音響的借景の効果を最大化するとともに、

キャビネットへの反射音の還流も軽減いたします。


極端に非対称なユニットの配置は、

前方音と後方音との干渉が、

上下左右全ての回折経路において打ち消し合うように

設定されています。


以上の工夫に加え、

個々のユニットに応じた制振チューニングを施すことで、

弊舎ドイツ古典フルレンジシステムは、

意外にも後ろ向きでも聴けてしまうシステムになっております。