無類の透明感

 

粋音舎では、

ドイツ古典フルレンジシステムと組み合わせるアンプとして、

小出力の真空管アンプを推奨して参りました。

事実、ドイツ古典フルレンジシステムの再生能力を、

最も鮮明に実感できるのは、

出力を欲張らない上質な真空管アンプからの、

透明感溢れる信号が送り込まれたときだからです。


例えば半導体パワーアンプを、

そのような上質な真空管アンプに変更すると、

音のコントラストが上がったように感じられます。

静寂感の増した背景から音像がクッキリと浮かび上がるのです。


と同時に、

半導体パワーアンプの再生音が濁っていたことに気付きます。

何を透明と感ずるかという感覚の基準がリセットされた結果、

濁りのベールが再生音全体を覆っていることや、

音像と背景の区別がぼやけている様が、

見えるようになります。

澄んだ水を飲んで初めて、

毎日飲んでいた水が濁り水であったことに気付くという訳です。


その澄んだ水に例えるべきアンプを突き詰めて行くと、

マニア秘蔵のクラシック管アンプに辿り着きます。

その清らかな音の前では、

昨今巷に溢れる真空管アンプ製品も、

多くの方が名機と信じるヴィンテージアンプの数々も、

それぞれに濁り水であることを露呈してしまいます。


しかし、元々市販では手に入らない上に、

希少管と共に消えゆく運命にあるアンプ達を、

ドイツ古典フルレンジシステムのパートナーとして、

広くお勧めする訳にも参りません。


そこで粋音舎では、

末永くご愛用頂ける現代の増幅プラットフォームに、

クラシック管アンプの透明エッセンスを移植することをテーマに、

開発を進めて参りました。

そして、いよいよリリース間近となりましたデジタルアンプ製品は、

透明度の新たな基準として粋音舎が提案させて頂く、一杯の澄んだ水です。


もう既存のアンプには戻れなくなってしまうかも知れませんが、

一杯如何でしょう?

Tripath


本機の中核に座るのは、

かつてT-classアンプとして一世を風靡したTripath製のパワーICです。

このチップの当時の活躍の場は、

専らデジタル 方式の特長が活きるコンパクトオーディオの分野でしたが、

そのクリアな再生音は、

ミドルレンジの本格オーディオアンプに迫る水準にありました。

そして、その進化形が本格HiFiアプリケーションへと展開してゆくことを

予感させるに十分なものでした。


しかし、多くのファンが次なる展開を待ち望んでいた矢先に

Tripath社はCirrus Logic社に買収され、

その後の事業再編の結果、

T-classアンプは製品ラインナップから姿を消してしまいます。

ドイツ古典フルレンジ専用デジタルアンプ

型式 SAA-AMP1


標準価格: 380,000円

推奨負荷インピーダンス: 4Ω

定格出力: 5W+5W(4Ω、1kHz)

周波数特性: 20Hz-20kHz(±3dB)


寸法: W330 x H133 x D380mm

重量: 12kg


粋音舎流


私達は、この不遇のTripathチップに光を当て、

その半導体アンプらしからぬ透明感の片鱗を、

粋音舎流の超絶チューニングで極限まで研ぎ澄ますことに挑戦いたしました。

そして、その秘めたる実力を開花させてみると、

その再生音の透明度たるや、

並みいるヴィンテージアンプを退け弊舎秘蔵のナス管アンプに迫るものでした。


この飛躍を実現したチューニングの根幹は、

トランス出力方式という本来であればデジタルアンプとは無縁の

ヴィンテージ技術の採用です。

Tripathチップを高インピーダンスのトランス負荷で軽快に動作させ、

電流出力の労苦から解放した結果、

D級動作でも僅かに残っていた曇りやくすみを一掃することが出来たのです。


その代償として、

チップの定格では数10Wが可能な最大出力が数Wに低下しましたが、

これはむしろドイツ古典フルレンジを駆動するために最適な

出力チューニングとなりました。

高感度ユニットにとって過大入力は、不要を越えてむしろ危険なものだからです。

鉄のチカラ


出力トランスを用いることには、

『音像構成』という、もう一つの大変重要な効能があります。

トランス鉄心内部の磁場の躍動が生み出す音のチカラが、

特に中低域において個々の音像に芯と存在感を与えるのです。

これは、優れたトランスを持つ真空管アンプに共通の特長でもあります。

本機も同様に、

優れた音像構成力と高い透明度を兼備した出力トランスを厳選して採用しています。

木のチカラ


2019年1月にリリースを予定していた本製品ですが、

直前に金属筐体から木製筐体への大変更を行うこととなり、

半年遅れでのリリースとなってしまいました。


筐体に金属素材を用いることの問題を提起したのは、

昨年リリースいたしました音響ボード/スペーサー製品です。

本製品の金属筐体を用いた当初モデルに対しても大変効果的で、

試作、チューニングの過程において不可欠な存在でした。


しかし、その効果から逆算すれば、

金属筐体が余りにも効率的に機械振動を伝達し、

部品間クロストークの経路となっている可能性が浮上いたします。

出力トランスという振動に敏感な部品を搭載する本製品では、

その影響は特に深刻である筈です。


そこで簡易的な木製筐体を組んで試聴してみたところ、

音場の広がり、個々の音の明瞭さ、伸びやかさ等々、

音質グレードの向上は明らかで、

それまで封印されていたトランス本来の音が解放されたかのようでした。

その差は、音響ボード/スペーサーの効果の延長上にあって、

より顕著なものです。

筐体には、トランス他の部品、部材が直接固定されますので、

当然のことかも知れません。


一旦封印を解かれたトランスの音を知ってしまうと、

金属筐体に束縛された窮屈なトランスの音を受け容れることは不可能です。


そこで、

スピーカーキャビネットで培った音の良い木の箱を製作するノウハウを投入し、

搭載トランスの持ち味を最大限に引き出すべく

筐体設計を一から見直すことにいたしました。

そして今回、ようやく限定モデルからリリースの運びとなった次第です。